No.001「梨の子ペリーナ」イタリアに伝わる幻想的な物語(BL出版)
梨の子ペリーナ: イタリアのむかしばなし (世界のむかしばなし絵本シリーズ)
- 作者:イタロ・カルヴィーノ
- 発売日: 2020/08/31
- メディア: 大型本
『梨の子ペリーナ』
酒井駒子さんの挿絵が美しすぎて書店で視界に入った瞬間、自然と手が伸びていました。
今日はそんな第一印象に引けをとらず魅力的だった、心優しく勇敢なペリーナの幻想的な物語を綴りたいと思います。
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[作家について]
酒井駒子さんは
和物テキスタイルのデザイナーから転身された絵本作家さんです。2005年に『金曜日の砂糖ちゃん』でブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌賞を受賞しています。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展は スロバキアの首都 ブラティスラヴァで開かれる国際的な絵本原画の美術展覧会で、絵本のイラストレーターに贈られる国際賞としては最も古いもののひとつらしいです。
と、とんでない賞だ…。
他にもたくさん作品を手掛けていて国内外で多数受賞されていますよ。
酒井さんの絵はどこか憂いを帯びた雰囲気があって、目が離せないですよね。だから不思議と人物に厚みが出て物語がより深まるように感じられます。
訳者の関口英子さんはイタリア文学の翻訳家さんです。
チポリーノの冒険(岩波書店)の訳者だと聞いて「あなた様でしたか…!」と思いました。翻訳家さんではかなり有名な方なんですね。
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[あらすじ]
王さまへ差し出す梨の数が足りなかった父親に、梨と一緒にかごへ入れられ王様の宮殿にやってきたペリーナは召使として働くことになりました。
心優しく賢いペリーナは仕事もすぐに覚え、王子とも仲良くなりました。
ところがある日 ありもしないうわさを流され、魔女の宝をとってこいと宮殿を追い出されてしまいます。
理不尽な仕打ちを受けても綺麗な心であり続け、出会うものたちの苦しみを解放しながら、魔女の宝を探しにいくペリーナ。
最後の最後にペリーナが手にしたものとは…。
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[感想]
イタリアの昔話ということで特産品の洋梨がモチーフになっているのが印象的ですよね。
ペリーナはイタリア語で「梨の子」という意味です。
あとがきでも関口さんがおっしゃっていたのですが、イタリア語で果物は全部女性名詞。だからイタリア民話に出てくる果物の化身はいずれも女の子なんだそうです。
日本にはなかなかない感覚ですよね。
とても健気なお話ですが
足りない梨の代わりに娘をカゴに入れる父親や、ありもしない噂を信じて宮殿を追い出す王さまの理不尽さには怒りを覚えます。
昔はイタリアに限らず世界中で子ども(ましてや女の子は)親や権力ある者の所有物として扱われてきましたから、昔話にそういった描写があっても不思議ではないのですが…。
そんな苦境にも負けず、心も汚すことなく駆け回るペリーナは美しいです。
そして私のお気に入りは終盤。
ペリーナが無事宮殿に辿り着いてからです。
帰ってきたペリーナを王子さまが迎えに来てくれています。
そして、こっそりと言うのです。
「ほうびになにがほしいかと王さまにきかれたら 地下室の大きな炭ばこがほしいと返事をするんだよ」
中には一体なにが入っているのでしょうか。
ぜひ、まだ読んでいない人には見ていただきたいです。
もう本当に愛くるしくて仕方ないですよ。
また、BL出版さんでは梨の子ペリーナを含めた世界のむかしばなし絵本シリーズが刊行されているんですが、とにかくクオリティが素晴らしいのです!
最近、新刊で出た降矢ななさん作画の『ヴォドニークの水の館』も最高でした。
まだまだ気になっている本だらけなので、機会があったら感想を綴れたらいいなと思います。
以上、『梨の子ペリーナ』でした。