ちゃいの読書日和

読書ときどき子育て 

No.002「ふくろうくん」ユーモラスなふくろうくんの愛すべき日常(文化出版局)

ふくろうくん (ミセスこどもの本)

ふくろうくん (ミセスこどもの本)

『ふくろうくん』

アーノルド・ローベルといえば、有名なのは「がまくんとかえるくん」シリーズ。
もちろん「がまくんとかえるくん」も大好きなのですが、まず私の中で外せないのが「ふくろうくん」です。
愛らしい姿に癒やされるだけでなく、まっさらで無垢な言動に言いしれぬ感動を覚えるのです。
今回は そんな「ふくろうくん」について綴りたいなと思います。



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[作家について]

アーノルド・ローベル(1933-1987)はアメリカの絵本作家さんです。

1962年に「マスターさんとどうぶつえん」でデビュー。
1970年から1979年まで代表作である「がまくんとかえるくん」を書き続けました。

シリーズの中にある「お手紙」は光村図書の小学校2年生の教科書に採用され掲載されています。
私もローベル作品と初めて出会ったのは国語の教科書で習った「お手紙」でした。

「ふたりはともだち」でコルデコット賞次賞と全米図書賞
「ふたりはいっしょ」でニューベリー
「どうぶつものがたり」でコルデコット賞を受賞しています。



先日までPlay!で行われていたアーノルド・ローベル展にも娘と足を運びましたが、細かく書き込まれた原画は圧巻の一言でした。

編集者の方となんども推敲を重ね、実際にお蔵入りになった原稿や言い回しを変えた原稿なども展示されていました。
それによってオチが大幅に変わった話もあるようです。
あの独特のユーモラスな台詞や展開は考えに考え抜かれた上でのものなんですね。

この展示のために、ローベルの技法を細部まで真似たクリエイターさんによるコマ送りの新作アニメもありました。
かえるくんとがまくんの友情溢れる1年を四季折々と共に魅力的に表現していて、ぜひ円盤にしてほしいくらい素晴らしいクオリティでした。

色んな人に愛され、20世紀を代表する絵本作家さんだったんだということがより伝わってきますよね。


 
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[あらすじ]

ふくろうくんは5篇の短編が収められています。


〈おきゃくさま〉

寒い冬の夜 ふくろうくんは、冷たい風と雪を纏った「ふゆくん」をお客様として家の中へ招き入れます。
ふゆくんは家の中で大暴れ。まさに猛吹雪です。
暖炉の火を消し、部屋の物を荒らし散らかして凍らせてしまいます。



〈こんもりおやま〉

ある晩 ベッドでふくろうくんが眠ろうとした時、毛布の下にこんもりしたふたつのおやまを見つけました。
「もし、ぼくが寝ている間にどんどん大きくなったらどうしよう?」
試しに右足をあげたり さげたり。
すると右のこんもりしたものがあがったり さがったり…。
「おやあ、こんもりくんが ひとつ うごいてるよ!」
さて、こんもりくんの正体とは?



〈なみだのおちゃ〉

涙でお茶を入れることにしたふくろうくん。涙を溜めるために悲しかったことを考え始めます。
「あしの おれてしまった いす」
「ストーブの うしろに おちて みつけられっこない スプーン」
こぼれ落ちる涙をいくつも集め、いったいどんなお茶ができるのでしょうか。



〈うえとした〉

ふくろうくんの家の1階と2階をつなぐ階段は20段あります。
1階の茶の間にいる時は2階が気になり、2階のベッドにいる時は1階が気になってしまう、ふくろうくん。
どうにかして上と下に同時にいられる方法はないかと、階段を大急ぎで上り下りし始めます。



〈おつきさま〉

ある晩、海辺に出かけたふくろうくんを大きなまんまるのお月様が照らします。
「ねえ おつきさま。ぼくが きみを みてるんだからね、きみも ぼくを みなさいよ。おともだちに ならなくちゃ ぼくたち」
でもお月様からの返事はなし。
なのに、帰ろうとするとずっとずっと後をついて来るんです。
家のドアは小さいから、きっとお月さまは入れないのに…。

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[感想]

全体に流れる ふくろうくんの とぼけた雰囲気がたまりません。
発想が幼い子ども そのものなんですよね。
大人は疑問にも思わないことに対してド真剣に悩んだり。
ローベルの想像力の豊かさが伺えます。


特にお気に入りなのが〈なみだのおちゃ〉です。
涙でお茶を入れる、なんて考えたこともないですよ。
ポットを抱えてわざわざ悲しいことを思い出して涙を絞りだす姿は……なかなか異様です。

でも思わず吹いちゃうのは、悲しいことのチョイスが面白すぎるから。
あらすじに書いた以外にも「おさらに のこってしまった マッシュポテト」とか「とまってしまった とけい…だってネジを巻く人がいないんだ!」とか。
なんとも平和でほっこりするんです。



そして娘と息子もふくろうくんのことが大好きなのですが、繰り返し読んでとせがまれるのは〈こんもりおやま〉です。
毎晩読む日もあるくらいでした。
子どもからしてもツッコミどころ満載なんですよね。

右足をあげたり さげたり。
すると右のこんもりしたものがあがったり さがったり…。
「おやあ、こんもりくんが ひとつ うごいてるよ!」

「「それはキミの足だからだよ!!」」

と、こんな感じで大笑いです。

そして この後、こんもりくんの正体が分からずじまいでイライラが頂点に達したふくろうくんは暴挙に出ます。
ベッドが壊れるほど めちゃめちゃに暴れまくるのです。

もちろん子どもたちは、またまた大爆笑。

私だけかもしれませんが、なんだか子どもの頃にMr.ビーンを見たときの感覚に似てるなぁって思いました。

シュール
バカげてる
でも愛おしい


こんな感性を持ったまま大人になってほしいと思います。
温かな笑いは総じて、心に活力をくれますから。


『ふくろうくん』
機会があったら是非読んでみてください。